「収支」と「利益」はどう違う?
起業する方は必ず知っておくべき資金繰りのノウハウをお伝えします!
創業融資のサポートをさせていただいると起業を考えておられる方、起業して間もない方とお話しする機会が多くあります。
その際、事業の実績や数値計画の話をしますが、現金や預貯金の入金と出金を記録して、儲かっているかどうかをお金がどれだけ残っているかで把握されている方が多いように思われます。
しかし、収支と利益はイコールではありません。収支表でお金が残っているからと言って利益が出ているとは限らないですし、お金がマイナスだからと言って必ずしも赤字とは限りません。
「収支」というのは、現預金の入金から出金を差し引いたもので、「利益」というのは、収益から費用を差し引いたものです。 違いがピンと来ないと思いますので、次のところで具体例を見ながらもう少し説明させていただきます。
売上も費用もすべて現金という場合には収支と利益は近い金額になることもありますが、多くの事業では売上の入金時期も仕入や外注費の支払時期も翌月だったり翌々月だったりと、売り上げた日、仕入れた日とお金が出入りする日はイコールではありません。
例えば、事業を始めた月の売上が200で仕入が100、入金は当月入金で仕入代金の支払は翌月払いの場合、当月の収支表は入金200-支出0=200となりますが、利益計算では、売上や仕入をその事実が発生した時点で認識しますので、当月の利益計算は売上200-仕入100=100となり、収支と利益は金額がイコールになりません。
逆に、売上金の入金は翌月で仕入代金の支払は当月の場合、当月の収支表では入金0-支出100=△100となり、利益計算は200-100=100となります。 入金時期が早くて支払時期が遅ければ入ってきたお金で支払ができますが、後者の例のように入金時期よりも支払時期の方が早いと利益は同じなのにお金は足りないということになります。
起業して間もない時期は信用がないため、支払時期は即日払いなど遅めに設定するのが難しいケースが多々あります。また、大手と取引できる場合には、大手の入金時期は売上日から間が空くケースも多くあります。そうすると、売上金が入る前に支払時期が到来し、売上があるのに支払に困るということになってしまうのです。
上記のように売上と仕入の入出金でも収支と利益の金額に違いが生じますが、もっと大きな違いが出てくることがあります。
例えば借入をしたときです。借入をするとお金がたくさん入ってきますが、それは利益ではありません。 借入を1000、利息の支払を10とすると、収支表では入金1000-支出10=990となりますが、利益計算では、収入0-費用10=△10となります。
借入の返済をしたときに、元金返済が50で利息10の場合、収支表では収入0-支出60=△60となり、利益計算では収入0-費用10=△10となります。
このとき誤解が多いのが、元金返済部分50も費用になると考えておられたりするのですが、費用になるのは利息部分だけになります。 利益計算目線で見ていた時には、元金部分がマイナスになっていないため、お金が残っているように見えるのですが、元金部分も出金しているので収支を考えるとマイナスになるため注意が必要です。
また、設備などの資産を購入したときにも収支と利益は大きく異なります。 設備を購入したときには購入時にお金が出ていきますが、利益計算上費用にできるのは購入時一括ではなく、その資産の耐用年数に応じた減価償却費部分だけとなり、複数年にかけて費用としていきますので、ここでも収支表と利益計算で大きな違いが出てきます。
このように「収支」と「利益」は内容が異なるもので、それぞれ経営者として把握しておくべき数字になります。
収支がわかっていなければお金がどのくらい残っているのか把握できないですし、利益がわかっていなければ、事業をしていて儲かっているのか損をしているのかがわからず続けていっていいものかどうか判断ができません。
利益が出ている場合には、その利益金額を把握できていなければ納税準備もできないことになってしまいます。 「資金繰り」を考える際には、収支と利益の金額をそれぞれ把握しておく必要があります。
収支が見えていなければ、どのタイミングで入出金が起きるのかが予測できず、お金が不足するタイミングが不透明です。利益が見えていなければ、事業を同じやり方で続けていていいのか何を変えていくべきかが見えてきません。
起業する方、起業して間もない方が、経営をしていくにあたって「収支」と「利益」の違いは必ず理解しておいていただきたいところです。
起業される際には創業資金や起業後の運転資金として創業融資の申込を検討される方が大勢いらっしゃいますが、創業融資を申し込む際にはいくらの融資を希望するかということを慎重に検討しなければなりません。
創業融資を受けた後に、運転資金が不足したため再度追加融資を受けることが可能かという問い合わせをいただくことがあります。 創業融資を受けて間もないうちに追加融資を受けることは非常にハードルが高いです。資金繰りが厳しくて、、、という理由ではとても難しいです。 売上が順調に伸びていて、さらに事業を拡大していきたいといった状況下であれば、追加融資も前向きに検討してもらえる可能性がありますが、当初の創業融資の返済も厳しいような状況で、さらに追加の融資を受けることはまずもって難しいと思っておいてください。
だからこそ、最初に融資を受ける際には数ヶ月分の運転資金や資金繰りをしっかり検討したうえで必要な資金の融資を申し込むことが重要になってくるのです。(事業計画の内容や信用情報によっては、希望額の融資を受けられないケースもありますので注意が必要です)
起業を成功させるには、まず起業後の1年をどのように乗り切るかが重要です。
「収支」の実績を月ごとに表にしてみることで、どれだけ資金が足りないかや資金が減っていくスピードなどが見えてきます。
収支の表を作成する場合には、入金の項目(売上金(売掛金)の回収、借入など)と支出の項目(仕入代金(買掛金)の支払、各種費用の支払、借入の返済、資産の購入など)について、内容ごとに記録していくことでどういった理由で資金が増えたり減ったりしているのかが見える化できます。
資金の入出金の原因や動きが見えてくると、1ヶ月2ヶ月先の収支の予定や見込みも計画できるようになります。 一方、起業した事業が儲かっているかどうかの判断のためには、「利益」を計算していくことも必要になってきます。
顧問税理士がついておられる方は資金繰り表の作成の仕方を相談してみてはいかがでしょうか。 「収支」も「利益」もプラスになるように、両者の違いを理解したうえで、二つの数字をしっかり把握して起業を成功させましょう!
京都 創業融資・創業支援フルサポートでは、日々多くの融資や事業に関するご相談をいただく上で、創業に関するご相談はもちろん、資金繰り管理についても適切なアドバイス・サポートを実施させていただいております。
初回相談は無料ですので、お気軽にお問合せ下さい。