緊急事態宣言が出される中、益々経済状況は悪化しており企業の存続のためにも事業資金の確保が急務となっております。
今回のコラムは、日本政策金融公庫の新型コロナウイルス感染症特別貸付についての情報第2弾をお伝えします。
令和2年4月16日、日本全国に緊急事態宣言が発令されいよいよ予断を許さない状況となってきました。
今後企業活動も益々制約を受けることとなります。業種によっては自粛要請により一定期間活動を停止せざるを得ません。
十分な補償があれば乗り切ることが出来るでしょうがそれを望める状況にはないように感じます。
事業継続のためには借入に頼らざるを得ない事業者も今後益々増えてくるでしょう。
令和2年3月23日のコラムにて、新型コロナウイルス関連の借入として、日本政策金融公庫の「国民生活事業」の融資についてご紹介させて頂きましたが、今回のコラムでは、日本政策金融公庫の新型コロナウイルス感染症特別貸付について、「国民生活事業」と「中小企業事業」の借入を対比する形で解説させて頂きます。
要件等、令和2年3月23日のコラムと重複する部分は同内容となっております。
日本政策金融公庫の一般的な事業者向け借入の窓口としては「国民生活事業」と「中小企業事業」の二つの窓口に大きく分かれ、申込用紙や必要となる提出書類も異なります。
この二つの窓口での取り扱われる事案の違いは、個人事業者は「国民生活事業」の取り扱いとなりますが、法人については比較的小規模な法人が「国民生活事業」でその他が「中小企業事業」の窓口での取り扱いとなるのですが明確な区分があるわけではありません。
それより両窓口では後ほど説明します貸出限度額が異なるため、新型コロナウイルス感染症特別貸付でいえば6千万円以内の借入を希望する場合は「国民生活事業」の窓口で、6千万円を超える融資を希望する場合は「中小企業事業」の窓口で取り扱われ、事業者の資金需要に応じて取扱い窓口が分かれることとなります。
日本政策金融公庫の新型コロナウイルス感染症特別貸付の対象者は以下の通りです。
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、一時的な業況悪化を来している方であって、次の1または2のいずれかに該当し、かつ中長期に業況が回復し、発展することが見込まれる方です。
1. 最近1ケ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少している方
2. 業歴3ケ月以上1年1ケ月未満の場合は、最近1ケ月の売上高が次のいずれかと比較して5%以上減少している方
(1) 過去3ケ月(最近1ケ月を含みます)の平均売上高
(2) 令和元年12月の売上高
(3) 令和元年10月から12月の平均売上高
※個人事業主(事業性のあるフリーランスを含み、小規模に限る)については、影響に対する定性的な説明でも柔軟に対応してもらえます。
※最近1ケ月の売上高とは月単位の売上高だけではなく、売上集計日から遡って1ケ月間でも可能となっています。
※創業後3ケ月未満の方は利用することができません。
新型コロナウイルス感染症特別貸付の貸付限度額は以下の通りです。
この限度額の違いによって取扱窓口が分かれることになります。
「国民生活事業」6,000万円
「中小企業事業」3億円
借入資金の使途は、「国民生活事業」も「中小企業事業」も同様で、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う社会的要因等により必要となる設備資金および長期運転資金とされており、救済資金として使途を限定されるものではなく幅広く募集されています。
返済期間【据置期間】は以下の通りで、「国民生活事業」も「中小企業事業」も同様です。
設備資金:20年以内【うち5年以内】
運転資金:15年以内【うち5年以内】
据置期間とは、借入金の元本の返済は猶予され利息のみの支払いが認められる期間で、【】内の据置期間は´うち´と記載されていますので、20年や15年の全体的な借入期間は変わらないことから据置期間を5年以内で長く取れば取るほど実質的な返済期間は短くなることになり、1ヶ月当りの返済額も大きくなります。
次に利子補給について解説させて頂きますが、日本政策金融公庫の新型コロナウイルス感染症特別貸付を受けることが出来たもの全てが利子補給を受けることが出来るわけではない点には注意が必要です。
要件を満たせは次の借入の金額に対応する利子について3年間利子補給を受けることが出来ます。
「国民生活事業」3,000万円
「中小企業事業」1億円
よって、上記の範囲内の借入であれば借入後3年間は実質的な利子負担はゼロとなります。
新型コロナウイルス感染症特別貸付を受けている方のうち、次のいずれかの要件に該当する方となり、上記の特別貸付の対象者の要件とは異なりますので重ねてお伝えしますが注意が必要です。
1.個人事業主(フリーランスを含み小規模事業者に限る):要件なし
2.法人小規模事業者:売上高▲15%以上
3.1、2以外の中小企業者:売上高▲20%以上
※小規模事業者とは卸売業・小売業・サービス業は常時使用する従業員が5名以下の企業、それ以外の業種は20名以下の企業をいう。中小企業者とはこの他の中小企業をいう。
※売上高要件の比較は、上記特別貸付で確認する最近1ケ月に加え、その後2ケ月も含めた3ケ月間のうちいずれかの1ケ月で比較。
※具体的な手続き等については、詳細が中小企業庁ホームページ等で公表される予定となっております。
利子負担額は「国民生活事業」と「中小企業事業」の区分けに応じ次の通りの負担となります。
「国民生活事業」3,000万円以下の部分 当初3年間:基準金利△0.9% 3年経過後:基準金利
3,000万円超6,000万円以下の部分 基準金利
「中小企業事業」1億円以下の部分 当初3年間:基準金利△0.9% 3年経過後:基準金利
1億円超3億円以下の部分 基準金利
※上記の利子補給の要件を満たせば、「国民生活事業」及び「中小企業事業」の当初3年間の下線の部分の期間の金利負担が実質ゼロとなります。それ以外の部分については基準金利での利子負担が必要となります。
※基準金利は、「国民生活事業」と「中小企業事業」とでは異なり、令和2年4月19日現在での15年及び20年の基準金利は、「国民生活事業」では1.55%で、「中小企業事業」では1.30%となっております。
当コラムは令和2年4月19日現在の日本政策金融公庫の情報です。
上記の内容を簡単にまとめると、日本政策金融公庫の新型コロナウイルス感染症特別貸付は借入希望額により「国民生活事業」と「中小企業事業」に窓口が分かれますが、要件を満たせば「国民生活事業」では6,000万円、「中小企業事業」では3億円の借入が可能で、この借入が出来たもののうち別途要件を満たせば「国民生活事業」では3,000万円までの部分、「中小企業事業」では1億円までの部分について3年間利子補給を受けることが出来てその期間は金利負担がゼロとなる制度です。
緊急の対策資金として条件的にも整備され、比較的借りやすいものとなっています。
現在希望者が殺到している状況ですので、要件を満たす方で借入資金を必要とする方は申込を急がれるべきでしょう。
現在新型コロナウイルスの影響は加速度的に広がり、それに伴う借入れや補助金等の救済システムも流動的に補完されている状況です。
先日経済産業省から信用保証協会を通した借り入れで保証料や金利負担を抑えた融資制度が発表され、これから各地方自治体の信用保証協会で制度が整備されつつあります。
広く情報を集めて長期的な運転資金の確保が急務となりますが、まずは自社の資金繰りをしっかりと見据えたうえで自社の存続を確保する迅速な行動を心掛けて下さい。
※当コラムは令和2年4月19日時点での情報です。情報が随時更新されていますので最新情報を確認するようにして下さい。